ウェブ解析士会議

ウェブライダー松尾氏が語る「検索結果1位を目指すなら、徹底的にユーザー思考を追求する」

検索集客を意識し訪問者の行動を促すWebコンテンツ制作の極意を紹介する。「ウェブ解析士会議2018」松尾茂起氏講演レポート。
「検索集客を意識し訪問者の行動を促すWebコンテンツ制作の極意」松尾茂起氏

検索エンジンに評価され、なおかつ訪問者の購入率を高めるようなコンテンツ制作をするには、作り手は何を意識すべきか。

「ウェブ解析士会議2018」では、株式会社ウェブライダー 代表取締役の松尾茂起氏が登壇し、「検索集客を意識し、訪問者の行動を促す、Webコンテンツ制作の極意」という講演を行った。

SEOを実現するためには、検索エンジンだけを見るのではなく、その先にあるユーザーの悩みを解決することが重要だと松尾氏は説く。そのうえで、ウェブライダーが制作するコンテンツが検索上位に表示されるノウハウを披露した。撮影:イイダマサユキ

検索エンジンに人生を救われた男のSEOのノウハウ

「検索エンジンに人生を救われた」と話す松尾氏は、ウェブライダーという会社を立ち上げ、さまざまなコンテンツを検索エンジンで上位表示させてきた。

たとえば、最近では、ワインのメディア『美味しいワイン』を2017年4月4日に立ち上げ、2018年5月時点で32記事と少ない記事数にもかかわらず、「ワイン」「赤ワイン」「白ワイン」「チリワイン」「日本ワイン」「父の日ワイン」の検索キーワードで1位になっているという。

もちろん、メディア『美味しいワイン』のコンテンツはすべてオリジナルだ。コンテンツの作り方について松尾氏は「とにかく、『ワイン』というキーワードで検索する人たちはどのような情報を求めているのか、どのようなコンテンツを見たいと思っているのかを実直に研究し続けた結果、検索結果1位になれた」と説明する。

ウェブライダー 代表取締役 松尾茂起氏

検索エンジンはユーザーの悩みや質問に対する最適な答えを出す

以前、Googleは会社情報ページに「Googleが掲げる10の事実」という内容を掲載していた(現在は、内容がアップデートされている)。これは、Googleがさまざまサービスを通じて社会にどう貢献していくかという理念が書かれていた。たとえば、「ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる」(下図)といったことだ。

Googleのトップページは、現在もシンプルで、その日に合わせたイラストと検索ボックスだけが配置されている。このページに広告枠を設ければ、短期的な収益は得られるが、ユーザーの利便性は損なわれ、長期的には利用者が減ることになる。

ユーザーを重視し、ずっとユーザーに使ってもらうことを一貫して行い、便利な検索エンジンを目指して日々進化しているのがGoogleということになる。では、便利な検索エンジンとは、どのようなものなのだろうか。

それは、検索エンジンだけを見るのではなく、検索エンジンの先のユーザーを見ることが大切で、ユーザーは、自分の悩みを解決したり、自分の願望をかなえたりするために検索している。Googleはユーザーの悩みや質問に対する最適な答えを返そうとしているのだ。

つまり、ユーザーを想定しながら、検索ユーザーの悩みをすぐに解決し、願望をすぐにかなえ、十分納得し、信じて頼りたくなるコンテンツを作成するように心がければ、自ずと検索上位に表示されるようになっていくのだ、と松尾氏は説明する。

ユーザーの利便性を考えた結果を検索エンジンでは表示するようにしている

多くの人の悩みを網羅し、潜在ニーズを意識する

次に、松尾氏は「ユーザーが好むコンテンツの傾向」を事例をベースに解説していく。

たとえば、ユーザーが父の日にワインを贈りたいと考えて「父の日ワイン」で検索するという仮説を立てたと想定しよう。

検索結果には、広告エリアと自然検索エリアが表示され、自然検索エリアの1位にはウェブライダーが制作した『美味しいワイン』の父の日特集のページが表示されている。検索結果1位を獲れた理由は3つあると松尾氏は分析する。

検索結果1位を取れた理由その①:ユーザーの抱える悩みをほぼ網羅している

1つ目は、「検索ユーザーの多くが抱えるほとんどの悩みを網羅的に解決」していることを挙げた。

「父の日ワイン」での具体的な悩み

『美味しいワイン』では、「父の日ワイン」で検索するユーザーの複雑に絡み合う悩みを解決するために、非常に長いコンテンツとなっている。

長いコンテンツであっても、検索結果1位となっているのは、1ページにユーザーの欲しい情報がわかりやすく、網羅されていたからではないか、と分析する。

いくら「網羅している」と言えども、すべての悩みを取り上げるのは不可能で、個別の悩みはいくらでもある。そういった場合、ウェブライダーでは、最大公約数的な悩みから順に掘り下げて、悩みを絞り込みそれに応えるコンテンツ作りをしているという。

どのような悩みがあるかを調べるときには、実際に検索エンジンでキーワードを入力して、上位に表示されているページに何が書かれているかを分析する。そして、その情報を集めるだけでなく、人は何を知りたいのかという「問い」を集めて、マインドマップにまとめていくという。

検索結果1位を取れた理由その②:ユーザーの潜在ニーズを意識している

2つ目は、「ユーザーの潜在ニーズを意識する」ことを挙げた。

『美味しいワイン』では、父の日のプレゼントで最も大事なのは、ワインを贈ることではなく、「気持ち」であると伝えており、「金額はあえて5,000円以内にする」や「700ml以上で一緒に飲んであげると喜ばれる」といったことが書かれている。

なぜこのようなアドバイスが書かれているかというと、自分の娘から高いワインをもらった父親は、飲まずに大事に保管してしまったり、娘の出費を心配してしまったりすることがあるからだ。ユーザーの気持ちを第一に考えて、安価なワインを一緒に飲んだほうがよいと勧めているのだ。

一方、コンテンツの収益モデルとしてはアフィリエイトである『美味しいワイン』としては、高価なワインが売れたほうが売上には良い。しかし、このような販売者側の都合を押し売りするのではなく、思いやりを持って潜在ニーズに気づかせてあげることが重要だと松尾氏は説明する。

検索結果1位を取れた理由その③:ユーザーに寄り添って信頼を獲得する

3つ目は、「ユーザーに寄り添い、信頼を獲得する」ことを挙げた。

ユーザーは、「説得」されて行動するのではなく、「納得」して自分から行動したいと思っていると話す松尾氏は、「この商品がお勧め! この商品が最高!」などと一方的に情報を伝えるのではなく、「ユーザーがなるほど」と納得してうなずく機会を増やすことが重要だと説明する。

「なるほど」と納得してもらうためには、どのようなタイミングで、どのような言葉をかけるかが大切になってくる。「言葉をかけるタイミングは、傾聴した後に行ってほしい」と話す松尾氏は、理想的な提案のアプローチを次のように示す。

理想的なアプローチ① 共感して、傾聴して、提案する

困っていることを聞き、共感して傾聴していけば、相手は自分に寄り添ってくれていると感じ、聞く耳を持つようになる。ここで、提案を行い、もし相手に反論されても受け入れて肯定し、距離感を大切にしながら、再提案するというアプローチだ。

これは、カウンセラーなども行っている方法だという。もちろん、Web上で実際にユーザーの声を傾聴することはできないため、『美味しいワイン』ではユーザーの心の声を言語化して、ユーザーの心の声を聞いていることを示し、コンテンツを見てもらうキッカケにしているという。

心の声を言語化するためには、ヒアリングや事前分析が有効である。それ以外にも、松尾氏は、普段から「Yahoo! 知恵袋」などの悩み共有サイトで検索して、世の中の人が何に悩んでいるかをチェックしているという。

理想的なアプローチ② 言葉のかけ方を意識する

傾聴を意識するだけでなく、言葉のかけ方も意識しなければならないと松尾氏は話を続ける。言葉を投げかける際には、画面の先にいるユーザーとの1:1のコミュニケーションを意識し、会話をキャッチボールしている意識で書いていけば、文体や言葉選びなどにも気を配るようになり、距離感に配慮した言葉選びができるという。

たとえば、友人が語り掛けるようなWebコンテンツなのに、「紹介します」ではなく、「ご紹介します」と書いてしまうと、丁寧にはなるが、距離感が遠くなってしまうといったことだ。

理想的なアプローチ③ リンクの見せ方も気を配る

リンクの見せ方にも気を配る必要がある。『美味しいワイン』は、コンテンツ内のリンク先からワインを購入してもらうことで売上につながるが、「最初からワインを購入して」と頼むのではなく、前述のような手法でユーザーの信頼を得て、コンテンツの最後にリンクを用意している。

たとえば、このリンクの文字が2倍(下図、オレンジ枠)の大きさになると、必要以上に目立って、ユーザーは「結局物を売りたいだけ」と感じて購入してくれない、と松尾氏は説明する。これまで良い関係性を作っても、最後のアプローチを間違えてしまえば、台無しになってしまうのだ。

理想的なアプローチ④ 伴走型の声掛けを心がける

松尾氏は、伴走型の声がけをお勧めしたいとも話す。たとえば、『美味しいワイン』では、ワインの基礎知識を紹介するコンテンツがあるが、ワインは横文字や専門用語が多いため、どれだけわかりやすく紹介するかが重要となる。横文字や専門用語に疲れた訪問者を放置するのではなく、「覚えておけば得するから、もう少しスクロールして読み進めよう」と声がけすることを心がけているという。

まとめ:SEOは、Search【Experience】Optimization

講演の最後に松尾氏は、次のように語り講演を締めくくった。

「検索ユーザーの多くが抱えるほとんどの悩みを網羅的に解決し、ユーザーの潜在ニーズを意識して、ユーザーに寄り添い、傾聴し、相手が納得して行動できるように情報発信することで、ユーザーに信頼してもらえるようになる。

信頼されれば、ページを読み進めてもらえたり、リンクをクリックしてもらえたり、ページをシェアしてもらえたりする。その結果、検索ユーザーの悩みが本当の意味で解決し、検索上位に表示されることになる。

ただし、情報発信するには覚悟がいることを忘れてはならない。コンテンツにしっかりと責任を持つ覚悟があれば、人々の悩みを解決するという社会貢献もできると考えている。

検索エンジンの話をするとSEOが重要だと言われて、テクニック的な事柄を試そうとする人もいるだろう。しかし、私が考えるSEOは、本来のSearchEngineOptimizationではなく、SearchExperienceOptimizationで、ユーザーの検索体験をよりよいものにするためにコンテンツを最適化する施策だと考えている。

コンテンツ作りをする人は、SEOを最適な検索体験を作るためにはどうすべきか、を考えてほしい。徹底的にユーザー思考を追求することを深堀していけば、SEOだけでなく、マーケティング全般や商品開発にも役立てられるだろう」。

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