この絵は、仏教の宇宙をえがいた曼荼羅(まんだら)で、輪廻(りんね)と悟りの世界を表現しています。 絵の基本は、中央の「心」字と、「老いの坂」、六道の各世界、および仏・菩薩(ぼさつ)・声聞(しょうもん)・縁覚(えんがく)の四つの世界(四聖界:しせいかい)です。この六道と四聖界とをあわせた十の世界を、十界(じっかい)と呼びます。 「心」字は、十界と赤い線によって結ばれ、十界や生死の区切りは鳥居(とりい)によって示されています。これは、人の心や行いによって死後の世界が決まることを暗示しています。 こうした絵画は、熊野比丘尼(くまのびくに)によって絵解きに用いられ、戦国時代から近世にかけて流行しました。 人道とは人間の世界のことで、汚れや苦しみ、無常であふれている、といわれます。恵心僧都(えしんそうず)・源信(げんしん:942~1017)による『往生要集』では、人道は不浄相(ふじょうそう)・苦相(