失敗しないためのCMS導入事例

CMS選びから運用のコツまで、「ビジネスに直結する」大規模サイトを成功に導く極意とは

大規模サイトの構築と運用は「適切なツールの導入」と「運用部門のリーダーシップ」が成功の鍵
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BtoBビジネス、BtoCビジネスにかかわらず、読者のなかには「大規模サイト」の構築・運用にかかわるWeb担当者も多いだろう。大規模サイトとは、単にページ数やコンテンツ数が多いサイトのことではなく、会員登録や申し込み、購読、物販などの機能を備え、顧客データベースや基幹システムと連携し、営業部門などのセールス活動を支援する「多機能・高機能」で「顧客との重要なチャネルとなる」サイトのことだ。

大規模サイトであるがゆえに直面するマーケティング戦略上の課題や運用上の課題を解決し、プロジェクトを成功に導くポイントとは何か。経験豊富なサイト構築と運用のスペシャリストに聞いた。

大規模サイトに立ちはだかるマーケティング戦略上の課題と運用上の課題

近年、Webサイトの役割は変化している。これまでの、一方的な情報提供やブランディングを目的にしたサイトから、サイト上で何らかの取引が発生するもの、あるいは、見込顧客を獲得し、顧客との関係を強化して営業の受注につなげていくようなマーケティング基盤まで、Webサイトはより「自分たちのビジネスに直結したチャネル」としての役割を担うようになっている。

一方で、大規模サイトを構築、運用しようとする組織にありがちな課題として、以下のような状況を目にしたことがある人も多いのではないだろうか。

  • マーケティング戦略上の課題

    関係する事業部門が多岐にわたり、また、それぞれの事業部門が独自のマーケティングプランと予算を持ち、年間計画を遂行している。そのため、全社的にマーケティングプランが統合されておらず、戦略に一貫性がない。また、Webサイトも事業部門ごとにプロモーションサイトが乱立していて統制がとれていない。

  • 運用上の課題

    サイトが大規模になればなるほど、日常的なシステムの保守、管理はもちろんのこと、コンテンツの運用、更新、サイトの導線改善やバナー設置といった内部施策まで、サイト運用の領域は広く、やらなければならないことも多い。また、施策でどのような効果があったか可視化されないため、どうしても施策が後手に回ってしまい、担当者の士気も下がる。

こうした課題を解決し、大規模サイトの構築、運用を成功に導くポイントはどのあたりにあるのだろうか。

システム開発やITインフラ構築をはじめ、企業向けITサービスを提供するSCSK株式会社で、さまざまな規模のサイト構築や運用を手がけてきた古和田潮氏に伺った。

「適切なツールの導入」と「運用部門のリーダーシップ」が成功のポイント

古和田 潮
SCSK株式会社
流通システム事業部門
流通システム第一事業本部
サービスシステム部
システム第三課長

古和田氏によれば、大規模サイト構築、運用を成功させるポイントは大きく2つ。1つ目は「適切なツールの導入」だ。

『規模』をどう定義するかにもよりますが、たとえ数万ページのサイトであったとしても、アクセスしてきた人やタイミングに応じて表示するコンテンツを変えない“静的なサイト”であれば、投資金額に見合うかという点で、高機能なCMSを導入するメリットはあまりありません。

一方、顧客データベースと連携して、アクセスしてきた人ごとに違う情報を表示させたり、SFAと連携してWeb上での行動履歴を営業担当者に通知したりといった“動的なサイト”の場合、オラクルの『WebCenter Sites』のような高機能なCMSが適していると考えています。

実際に、私たちが手がけた事例でも、Webサイトを通じて売上に貢献する、業務を改善してコストを下げ、利益を上げるための戦略基盤、いわば、Webサイトをプロフィットセンターと考えるお客さまにWebCenter Sitesを多く選んでいただいています。その意味で、自社のWebサイトにどういう役割を持たせたいのか、まずは目的を明確にすることが最初の一歩です」(古和田氏)

適切なツールの導入という意味では、目的に応じた機能面での拡張性や、柔軟なカスタマイズ性といったポイントも見逃せない。最近は、どのような機能が注目されているのだろうか。

大規模サイトでは、来訪者の興味のある情報を優先的に表示させるレコメンド機能を導入する企業が増え、テクノロジー先行からようやく活用の段階に移ってきたと思います。これからは、CMSを使ってきちんとWebサイトへの流入に取り組み、見込顧客を売上受注に結び付けるマーケティング・オートメーションに注目する企業がますます増えるでしょう。

WebCenter Sitesは、拡張性や柔軟性に優れているので、導入後の機能拡張にも柔軟に対応できます。この点は、お客さまに安心して導入を勧められる大きなポイントです」(古和田氏)

続いて2つ目のポイントは、構築後の「運用部門のリーダーシップ」にあるという。

CMSというツールを導入したらそれで終わりではなく、運用しながら適切な施策を継続的に展開していくことが必要となります。マーケターが施策の効果を測定し、次の施策を考えることに注力できるよう、PDCAサイクルを回していくことが不可欠です。

大規模サイトでは、関係部門も多く、サイトの導入により業務の流れが変わることもあります。運用部門が旗振り役となり、プロジェクトの原動力として大きな権限を与えられるのが理想的ですが、そうではないケースも現実には多くあります。仮にそうだったとしても、少なくとも意思決定のキーマンを押さえておくことが、プロジェクト成功のためには重要となります。

たとえば、トップページのデザインでなかなか合意が得られないとか、キービジュアルの順番争いでもめるとか、そういうときに誰が決められるのか、意思決定の“勘どころ”を運用部門が押さえておくことも、プロジェクトを円滑に進めるうえでは大切です」(古和田氏)

「WebCenter Sites」によるプラットフォーム構築でターゲット顧客である医療従事者のCXを向上させた大手製薬会社

続いて、成功のための2つのポイントを踏まえながら、古和田氏にこれまで手掛けてきた大規模サイトの具体例をうかがった。

代表的な事例は、大手製薬会社の医療従事者向け会員制Webサイトの立ち上げです。

製薬会社による医療従事者向けの情報提供は、業界内で定められたルールによって細かく規定されています。そこで、医療従事者に適正に薬の情報を届けるためのサイトを2011年2月にオープンし、その後、Web上のイベントの申し込みなどの機能を順次拡張してきました」(古和田氏)

近年、医療従事者の情報収集の手段として、MR(医薬情報担当者)に次いでインターネットの比率が高まっている。

この製薬会社は、以前は製品ごとに独自の製品プロモーションサイトを制作、運用し、多くの製品関連サイトが乱立していた。そのため、全社視点でのWebマーケティングが行えないという課題や、同じ医療従事者に向けたメッセージが複数のWebサイトから分散して発信される配信効率の悪さといった課題があった。

これを「WebCenter Sites」によりWebマーケティングを一元的に行う基盤として統合し、ターゲット顧客である医療従事者のカスタマーエクスペリエンスを高めるためのプロジェクトを実施したという位置づけだ。

『WebCenter Sites』のレコメンデーション機能によって、アクセスしてきた医療従事者が何科の先生だからどの薬の情報という風に、効果的なOne to Oneのプロモーションを実現しています。

また、サイト上での医療従事者の行動履歴、たとえば、このイベントに申し込んだ、こういうページをよく見ている、こういう資材を購入したという情報は、MRが日々使っているSFAツールに通知されます。MRはそれを見て、担当ドクターが何に興味を持っているか、どういう行動をしているかを踏まえてアプローチできます」(古和田氏)

PDCAサイクルの実現
Plan
分析された結果を反映させ、ユーザーに求められるコンテンツを提供
Do
多様なコンテンツを、効率よくリポジトリに格納
Check
ユーザーが必要なときに必要なコンテンツを配信
Action
配信状況を分析し、コンテンツに対するユーザーの評価を把握
「WebCenter Sites」により、乱立するプロモーション用Webサイトを統合し、訴求力のあるコンテンツ提供のためのPDCAサイクルを確立した。

現在、同サイトにかかわる運営業務は大きく分けて3つあり、システムの保守・運用業務と、ドクターの会員登録や本人確認などを行う会員デスク業務、コンテンツの編集業務を、それぞれ製薬会社が委託する企業が担当している。そして、サイト全体のプロジェクト管理は、社内のオーナー部門がガバナンスを効かせる体制になっている。

このオーナー部門は、プロジェクトの立ち上げ時に作られ、この部門の3人の担当者を中心に、営業部門、マーケティング部門の担当者からなるPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)という形でプロジェクトを進めました。そして、公開後の運用フェーズでは、オーナー部門が各製品のマーケティング担当に対して、どういうルールでサイトにコンテンツを公開するのか全体の調整をしたり、アクセス履歴やプロモーションの分析結果を定期的にマーケティング部門に提供したりしています」(古和田氏)

古和田氏によれば、プロジェクト成功の秘訣は、オーナー部門の担当者に権限を与え、リーダーシップを発揮して社内調整を行った点にあるようだ。

このサイトやチャネルは、ドクターに役立ててもらうために作るというビジョンが担当者に明確にあり、とにかく意志がぶれないというのを感じました。どういう目的で、どうしていきたいのかを常に考え、実行していくオーナー部門の実行力が成功の秘訣だといえます」(古和田氏)

コンテンツ管理機能やパーソナライズ機能の活用で目的に合わせた高機能サイトを構築

その他にも、SCSKでは「WebCenter Sites」を用いてさまざまな業種のWebサイトでCMS導入を手がけている。

製造業では、Webサイトのコンテンツだけでなく幅広いコンテンツ管理機能の強みを活かし、大手電機メーカーのPIM(Product Information Management:製品情報管理)システムで導入しました。プロモーション用の販促資料や商品画像といったコンテンツを一元管理し、海外の販社向けにWebサイトからのダウンロードで利活用してもらうサイトとなっています。

海外ユーザーに向けたグローバルサイトなので世界中からアクセスがありますが、『WebCenter Sites』は多言語に対応しており、プロモーションやブランディングのグローバル化にも問題なく対応できる点が特徴です。

また、駿台予備学校(駿河台学園)の公式サイトでは、基幹システムと連携した会員制Webサイトの基盤を構築しました。同校に通う校内生や入学を検討する一般の学生(校外生)、保護者、教員など、さまざまな立場のユーザーが利用します。そこで『WebCenter Sites』のパーソナライズ機能を使い、会員ごとに適したコンテンツが表示される仕組みを実現しました」(古和田氏)

“人とツールの両輪”で課題を解決していくことが大事

最後に、大規模サイト構築プロジェクトでWeb担当者が持つべき心構えや、準備しておくとよいポイントなどについてアドバイスをうかがった。

仕組みやツールを導入するだけで、すべてがうまくいくほど簡単ではありません。大規模サイトの構築、運用には“人とツールの両輪”で課題を解決することが大事です。Webを重要なチャネルととらえ、これを活かして何をするか、会社が方針を考えて体制を整備し、Web担当者が具現化して、IT部門が技術をサポートする。そういう風にうまく社内のガバナンスが整備できれば、プロジェクトが成功する確率は高まります。

プロジェクトが成功すると、社内でWebの取り組みの認知度が高まります。活用するメリットが社内の各部門で認識されると、積極的にWebサイトが更新され、さまざまな施策のアイデアが出てくるという好循環ができます。

私たちは、開発面でお客さまを支援するだけでなく、サイト基盤としてのCMSの選定や、その基盤上で何を展開していくのかをお客さまと相談しながらトータルに、ワンストップでご支援しています。

今後は、たとえば、CMSとビッグデータ分析を組み合わせた運用省力化のツールをご提供していきたいと考えています。膨大なデータを分析し、そこから何を読み取って、どう運用に活かすか、ビッグデータ時代ならではの効率的なデータドリブンの仕組みをどう作っていくかが今後の課題です」(古和田氏)

◇◇◇

Webサイトは、自分たちが見せたい情報を発信する「自社中心」基盤から、サイトに来訪した顧客が見たい、役に立つ情報を発信する「顧客中心」基盤へとシフトしてきている。特に、大規模サイトの構築、運用にはCMSをはじめとするツールがますます不可欠となっている。

CMSの選定に際しては、Web担当者が、顧客との関係強化や、売上アップのためのマーケティング施策に注力していくためのツールという前提に立って進めていくことがますます求められてくるだろう。

  • 「Oracle WebCenter Sites」製品紹介資料ダウンロード(日本オラクル株式会社)

    Webコンテンツ管理システムとしての基本的な機能はもちろん、オンラインでの「カスタマー・エクスペリエンス」を改善するための機能を備えた「Webエクスペリエンス管理」のためのシステム「Oracle WebCenter Sites」の製品紹介資料がダウンロードできます。

SCSKの総合Webソリューション「WEBSAS」(ウェブサス)

SCSK株式会社が、幅広い業種の企業の基幹系システムや業務システムの開発を通じて蓄積してきたWebサイト構築、運用のノウハウを活用し、コンサルティングから企画・デザイン、開発・構築、運用・保守まで、Webに特化したフルラインサービスを提供するブランドが「WEBSAS」(ウェブサス)だ。

「WEBSAS」が提供するソリューションの根幹を成すのがCMSで、オラクルが提供する「WebCenter Sites」をはじめとするいくつかのCMSを中核に、さまざまな機能やサービスを組み合わせて提供している。

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