ノーベル経済学賞の受賞者であり、世界的に大きな影響力のあるジョセフ・スティグリッツ。ドナルド・トランプ米大統領の政治は「進歩の終わり」をもたらす──「プロジェクト・シンジケート」への寄稿で、彼はそう警告している。 大きな進歩は簡単に起きない 35年前、ヨーロッパで共産主義が崩壊し、世界は時代の激変を経験した。フランシス・フクヤマが、その時代の節目を「歴史の終わり」と評したのはよく知られている。それは、すべての社会がいずれはリベラル・デモクラシーと市場経済に行き着くという予言だった。それがいかに的外れの予言だったのかをあげつらうのも、いまではすっかり陳腐な常套句となった。 ドナルド・トランプと「MAGA(米国を再び偉大な国にする)」運動が復権を果たしたいま、時代はむしろ「進歩の終わり」を迎えていると言うべきかもしれない。 私たちの多くは、進歩を当たり前のものだと思い込みがちである。だから、2
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