WBA世界バンタム級4位比嘉大吾(29=志成)は王座奪取とはならなかった。同級王者の堤聖也(29=角海老宝石)に挑戦し、判定の末にドロー。WBC世界フライ級王座に続く、世界2階級制覇を逃した。高山勝成が持つ5年11カ月の国内最長ブランク記録更新はならなかったが、見応えたっぷりの攻防を繰り広げた。
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約7年ぶりのチャンピオンベルトには手が届かなかった。それでも比嘉は充実した表情を浮かべた。
4回、偶然のバッティングにより相手が右まぶたを切った。9回に激闘。比嘉が左フックでダウンを奪ったが、すぐに堤にダウンを奪い返された。その後も最後まで壮絶な打ち合いが続いた。判定でも決着が付かずドローとなり、王者返り咲きとはならなかった。
アマ時代から親交のある堤とは4度目の対戦。同じ95年度生まれの同級生に対してアマ時代は2戦2敗、プロ初対決となった20年10月のノンタイトル戦はドローだった。約4年半ぶりの再戦、ボクシング人生のすべてをかける思いでぶつかり、再びドローとなった。
デビュー以来15連続KOの快進撃。17年5月にWBC世界フライ級王座を獲得した。しかし18年4月、3度目の防衛戦で前日計量に失敗して王座を剥奪され、試合も9回TKO負け。その後、ライセンス無期限停止処分を受けた。それでも再び立ち直った。4連勝(2KO)をマークして昨年9月、WBO世界同級王者武居由樹(大橋)に挑戦。僅差で判定負けとなったとはいえ熱戦を繰り広げた。
満足感から一時は現役引退を決意したが、同11月に王座奪取した堤への挑戦オファーが届いた。1週間熟考して現役続行を決めた頃、前所属先の先輩ボクサー知念大樹さんが都内の自宅で亡くなった。大樹さんは宮古工高時代の知念健次元監督の次男でもある。
比嘉は「白井・具志堅ジムの時も1年ぐらい大樹先輩と一緒で。学生の時からお世話になったし、東京でも良くしてくれて。(大樹さん死去は)影響あります」と現役続行と世界再挑戦への思いを強くした。知念元監督も「大樹も一緒につれていく」と会場で見守った。さまざまな思いを胸に戦った。王者返り咲きとはならなかったが、全力を出し尽くした。【奥岡幹浩】
◆比嘉大吾(ひが・だいご)1995年(平7)8月9日、沖縄・浦添市生まれ。宮城小-仲西中まで野球部。中学3年時、具志堅用高会長の現役時代のKO動画に触発され、宮古工に進学してボクシング部へ。具志堅会長に誘われ、白井・具志堅ジムでプロ転向。14年6月にプロデビューし、1回KO勝ち。15年にWBCユース・フライ級王者、16年に東洋太平洋同級王者に。17年5月にWBC世界同級王者となり2度防衛。18年4月の3度目防衛戦の前日計量で体重超過し王座陥落。同12月、WBOアジア・パシフィック・バンタム級王座獲得。身長160・8センチの右ファイター。